1)麻しんの診断
麻しんの診断は、特徴的な熱型と症状から、ある時期になれば診断は容易とされていますが
病初期はかぜや気管支炎と区別できないことが特徴です。
2)麻しんの症状
麻しんの症状は、カタル期、発疹期、そして回復期の3期に分けられます。
カタル期は、くしゃみ、鼻汁、咳、目やになどのカタル症状が見られます。発熱が2日〜3日続いた後に、半日ほど平熱近くまで解熱します。
この時点ではかぜや気管支炎との区別は困難です。にもかかわらず、このカタル期が最も感染力が強いのです。
発疹期は、カタル期に続いて見られます。一旦、熱が下がってから、2回目の発熱が見られ高熱が3日〜4日続きます。2回目の発熱が見られるころ、お子さんの口の中が全体的に赤くなり、歯茎に近い部分の粘膜に白っぽい小さな斑点が出現します。これは
コプリック班と呼ばれ麻しんに特徴的です。
このコプリック班を確認するまでは麻しんと診断することは困難です。また、2回目の発熱と同時に首筋や顔のあたりから紅色の発疹が出現し体や手足に拡がってゆきます。一個一個の発疹は正円ではなく不正形で、次第に大きくなり、隣同士の発疹がくっついて見えます。これは融合傾向がある発疹と呼ばれます。
回復期は、熱が下がり、食欲も出てきます。また、体中の発疹は紅色から暗赤色、さらに褐色に変色ししばらく残ります。これは
色素沈着を残す発疹と呼ばれ麻しんの特徴の一つとされています。
3)成人麻しんの診断
平成19年当時、高崎市で最初に発生した患者さんは成人麻しんと呼ばれ診断が難しいタイプだったそうです。年齢が19歳と青年であったため、典型的とされる症状が目立たず、最終的には血液検査を行って麻しん抗体を調べて確定診断に至ったそうです。この方のように
思春期・青年期以上の患者さんが麻しんにかかった場合は、特に「成人麻しん」と呼ばれ小児の麻しんと異なり、症状だけでは診断が下せない場合があるので注意が必要です。
厚労省 Q&A なぜ、平成19・20年に10代から20代の人を中心に流行したのですか?
「かつては小児のうちに麻しんに感染し、自然に免疫を獲得するのが通常でした。しかし、麻しんワクチンの接種率の上昇で自然に感染する人は少なくなってきています。
10代から20代の人たちの中には、今まで一度も麻しんの予防接種を受けていない人がいます。そのうえ、そもそも予防接種は、一度で十分な免疫が獲得できるとは限らず、麻しんワクチンを一回接種しても、数%程度の人には十分な免疫がつかないことが知られています。そのような人達が蓄積していたものと考えられています。
さらに、麻しんワクチンの接種率の上昇に伴って、麻しんの患者数が減り、麻しんウイルスにさらされる機会が減少しました。そのため、幼少時にワクチンを1回のみ接種していた当時の10代から20代の人は免疫が強化されておらず、時間の経過とともに免疫が徐々に弱まって来ている人がいたことも原因の一つと考えられています。 」(厚労省 Q&Aより抜粋)
厚労省 Q&A:
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/measles/index.html
4)潜伏期
麻しんの潜伏期はおよそ10日(9日〜11日)です。
症状が出始めてから麻しんと診断できる時期までは、およそ2日〜3日ですから、麻しんと診断された日から2週間弱前に麻しんウイルスに感染していたと考えることができます。
5)伝染力のある期間(他の人に麻しんをうつす期間)
麻しんの伝染力は
診断がまだつかないカタル期に最も強く、発疹期に入ると急速に弱まります。
およそ発疹のでる4日前から、発疹が出てから5日後まで伝染力があるとされています。