こどもの花粉症の特徴は?
<幼児~小学校低学年>
・鼻づまりで夜間眼を覚ます
・鼻を触る(鼻すすり・鼻こすり)・目を擦る・目を押す
・鼻の穴の入り口が赤く擦れる、まぶたが赤くなっている
・鼻みずによる「咳・咳払い・声がれ」が続く
・鼻づまりが強く口呼吸をする
・サラサラ鼻汁でないことも多い
<小学校低学年~>
・目のかゆみ症状がつよくなってくる
・ぽったと垂れる水のような鼻水が増える
幼稚園児でも花粉症になりますか?
はい。最近は花粉症も低年齢化しています。
2歳~4歳児くらいからスギの抗体が検出されます。
但し、検査でスギアレルギーでも、症状が強くなければお薬は必要ありません。
また、スギアレルギーのあるお子さんは風邪や体調不良時に花粉症の症状が悪化しますが、風邪が治ると症状が治ってしまうお子さんもあります。このようなお子さんも長く薬を飲み続ける必要はありません。
子どもの花粉症の注意点
お子さんは、痒いところを遠慮なしに掻いたり・叩いたりして、傷を作り、湿疹ができてしまいます。
花粉症の基礎治療も大切ですが「花粉皮膚炎(湿疹)」の治療をしっかり行うと「痒み」が減り、早期の改善につながります。
どのような治療がありますか?
対症療法と根治療法の2種類があります。
<対症療法>
シーズン毎に症状を抑える治療法です。
・内服薬、点眼薬、点鼻薬などを使用する一般的な花粉症治療です。市販薬として販売されている薬もあります。
・令和2年(2020年)シーズンから、「ゾレア」の皮下注射が保健適応になりました。ゾレア(オマリズマブ)は「ヒト化抗ヒトIgEモノクローナル抗体」という注射薬で、スギIgE抗体が体内で働かないようにする薬です。重症患者さん(昨年度に抗ヒスタミン薬の服薬+ステロイド点鼻を行ったのに、十分な効果が得られなかった患者さん)にのみ保険適応があります。2~4週間毎に皮下注射を行います。12歳以上のお子さんから使用できます。
<根治療法>
今すぐに症状を抑える薬ではなく、長期にわたってスギ花粉の症状を軽減させることを目的とした根治治療です。
免疫療法とも呼ばれ、現在は舌下免疫療法が主流です。5歳以上のお子さんから始められます。
新規に治療を開始できるのは、スギ花粉の飛散が終わった頃、概ね5月中旬~下旬からです。
お薬以外の対処方法
温かいお湯で洗顔
・花粉症の方は、入浴時には鼻の通りが良くなったご経験をお持ちだと思います。これは、鼻の中に40度くらいの湯気が入り、鼻の中が温められると、鼻粘膜の充血が減り空気の通り道が広くなるからです。
鼻づまりがひどい時は「水」ではなく「温かいお湯」で洗顔し鼻をかむと楽になります。同様に温かいおしぼりを鼻に当てると楽になります。
・外出時の装い:ツルツルした服がお勧めです。もふもふした服や、けば立つ服装は花粉が落ちにくく、室内に戻っても服に取り付いた花粉を吸い続けてしまいます。
・帰宅時の対応:花粉をご自宅に持ち込まないことが大切。服の花粉を落とし、お湯で洗顔しましょう。ひどい場合は着替え・洗濯・シャワーが極めて有効です。
いつ頃から治療が必要ですか?
2月の節分の頃から、花粉症の薬を用意しておく事をお勧めしています。
花粉症はいったん症状が始まると、鼻粘膜のむくみやアレルギー性の炎症が強くなってしまいお薬の効きが悪くなります。花粉症の症状を感じたらすぐにお薬を使えるように用意しておくことが大切です。
どのような薬ですか?
発症初期には抗ヒスタミン薬の内服から開始します。
症状に応じて以下を組み合わせます
鼻みず・くしゃみ→第二世代抗ヒスタミン薬(クラリチンなど)
鼻づまり→ロイコトリエン拮抗薬(オノンなど)
鼻づまり→ステロイド剤の点鼻
目の痒み→点眼(抗ヒスタミン薬・ステロイド剤)
目の周りの痒み→適切な軟膏療法を併用
薬は眠くなりますか?
眠くなる薬もあります。
鼻みずを抑える「抗ヒスタミン薬」というお薬は眠くなるため、多くの薬は(原則として)自動車の運転ができません。
子どもは運転をしませんが、自転車や遊具からの転落等に注意して戴いています。
抗ヒスタミン薬でも眠くならない薬が3種類あります。
一方、鼻づまりを抑えるタイプのロイコトリエン受容体拮抗剤やステロイド剤は眠くなりません。
ロイコトリエン受容体拮抗剤:プランルカスト(オノン)・モンテルカスト(シングレア・キプレス)
眠くならない薬はありますか?
はい。4種類あります。
次の4種類は「抗ヒスタミン薬」ですが眠くなりにくいので、自動車運転の制限がありません。
そればかりか海外では飛行機のパイロットも服用して良い薬もあります。
アレグラ(フェキソフェナジン:6ヶ月児~)
クラリチン(ロラタジン:3歳児~)
デザレックス(デスロラタジン:12歳~)クラリチンの仲間です
ビラノア(ビラスチン:15歳~)
*アレジオン(エピナスチン)は眠気の注意がありますが、注意して自動車の運転をすることができます。
眠気には個人差があります。
インペアード・パフォーマンスとは?
聞き慣れない用語ですが、抗ヒスタミン薬を服用した際におきる「意識しにくい能力」と訳されています。
眠気とは違い、本人だけでなく周囲も気づきにくい「能力」を指します。近年、抗ヒスタミン薬を服用中の事故などに関連してクローズアップされています。
多くの抗ヒスタミン薬はインペアード・パフォーマンスが低下(意識しにくい能力の低下)があるため、勉強やスポーツで実力を発揮できていないかも知れません(個人差があります)。
一般的に、脳内に作用しにくい、アレグラ(フェキソフェナジン)・クラリチン(ロラタジン)・ビラノア(15歳以上)はインペアード・パフォーマンスの低下が少ない薬剤とされています。
眼の痒み・痛みが治りません!
点眼と軟膏の見直しをお勧めします。
花粉症の眼の症状には内服薬は効きません。点眼薬をしっかり点眼してみましょう。
点眼薬は3系統ありますので、医師にご相談下さい。
また、点眼薬は眼の中の痒みは治せますが、眼の周りの湿疹には効ません。適切な軟膏治療が必要です。
貼るタイプの薬はありますか?
はい。15歳以上の方に処方できます。
抗ヒスタミン薬の貼り薬「アレサガテープ」が発売されています。
以前から発売されている「レミカット」という内服薬の貼るテープ製剤です。
眠くなるので(原則として)自動車の運転ができません。
来シーズンの予防は?
スギ舌下免疫療法(根治療法)が行えます。スギ花粉の飛散が終わる5月中旬から行えます。
重症花粉症でお悩みの方へ
ひとつでも当てはまれば、重症花粉症です
・鼻をかむ回数が、1日11回以上
・くしゃみが、1日11回以上
・一日中鼻づまりがひどい
通常の重症花粉症の治療を行っても改善しない場合は
モノクローナル抗体による治療を行える場合があります
(12歳以上の方のみ)