《 小泉重田小児科》
小児科・アレルギー科
子どもの嘔吐下痢
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1 ウイルス性急性胃腸炎とは?
2 嘔吐するしくみは?
3 応急(1)吐いたら、飲ませない
4 飲みたくても「がまん」の理由
5 応急(2)少量頻回の経口補液
6 経口補液水とは何ですか?
7 応急(3)お米・うどん・パン
8 母乳を与えてよいですか?
9 粉ミルクの濃さは?
10 嘔吐が続く場合
(重要!!)
胃腸炎以外の病気では?
11 家族にうつさない工夫
12 消毒(次亜塩素酸ナトリウム)
13 点滴は必要ですか?
14 ノロウイルス検査は必要?


(1)ウイルス性急性胃腸炎とは?
ウイルスが胃腸に入りこみ、胃腸の働きを悪くするために、嘔吐や下痢をおこします。病初期は嘔吐だけ、下痢だけの事もあります。
ウイルス性の急性胃腸炎は「おなかのかぜ」「はきくだし」「嘔吐下痢症」などとも呼ばれます。
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(2)嘔吐するしくみ
一回に飲んだり食べたりする量が、現在のお腹の大きさ(消化吸収能力)を超えてしまうと、嘔吐や下痢の原因になります。健康なときの胃腸の大きさを仮に「どんぶり一杯」とすると、急性胃腸炎の時はウイルスの作用で胃腸の大きさが「おちょこ一杯」くらいに小さくなっていると考えて下さい。
 急性胃腸炎という病気のイメージは「小さくなったお腹の受け皿に、過剰な量の食物や水分が入るために、器からこぼれるように嘔吐や下痢をおこす」と考えることもできます。
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(3)応急手当1_吐いたら、飲ませない
嘔吐したら吐き気止めの坐薬を使い、30分から1時間の絶食をお勧めしています。
嘔吐すると脱水症を心配したり、お子さんが水分を欲しがるため、嘔吐した直後でも水分を与えてたくなるのが親心です。
しかし、胃腸の受け皿が小さい状態では、水分を摂取しても受け皿からあふれるように嘔吐してしまいます。
そこで、胃腸の働きを良くする吐き気止めの坐薬を使用し(1日に2回まで)、1時間は絶食して胃腸を休め、ゆっくり寝かせてあげると良いでしょう。水分を欲しがっても短時間の「がまん」も大切です。
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(4)「がまん」する理由
例えば50ccの水分をとった直後に嘔吐した場合を考えると、嘔吐する量は50ccでは済まず、胃液も併せて嘔吐するので、飲んだ量以上に嘔吐してしまいます。これでは水分補給のつもりが、反対に水分や電解質まで失ってしまいます。短時間に「飲んでは、嘔吐」を繰り返すと、胃液も失われるので脱水状態が強くなります。お子さんに飲食を「がまん」してもらうのは「飲んでは、嘔吐」を予防するためです。夜中に嘔吐した場合には、吐き気止めの坐薬を入れて、そのまま朝まで寝かせてあげた方が良い場合もしばしば見受けられます。
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(5)応急手当2_少量頻回の経口補液
コップに100ccの水分(経口補液水)を用意します。お子さんにゴクゴクと飲ませないで、保護者がティースプーンで一杯ずつ口に注いで下さい。一口与えたら時計を見て一分間待ち、また一杯与えて下さい。通常40分から50分程度で100ccを飲みきります。100cc飲めたらお子さんも保護者も一時間休憩して下さい。この一時間は胃腸の仕事を減らし負担を軽くするための時間です。今100っc飲んだばかりですから、飲水は避け欲しがっても「がまん」しましょう。
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(6)経口補液水とは何ですか?
経口補液水とは、口から水分を飲むことによって、治療するための特別な飲み物です。脱水症の治療というと点滴を思い浮かべますが、「経口補液」は点滴より生理的に水分が補給されるので、近年、再び有用性が見直されています。
日本には3種類の経口補液水があります。病・医院で処方される「ソリタT顆粒」、調剤薬局で販売されている「アクアライトORS」、「経口補液水OS-1」の3種類です。

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(7)応急手当3_お米・うどん・パン
水分を嘔吐しないようになったら、お米(お粥)、パン、うどんなどの穀類を補給しましょう。穀類は体のエネルギーとなり疲れやだるさが取れます。お肉・野菜はもう少し控えた方が安心です。お子さんは意外とお粥を好まないので、パン粥(お鍋に牛乳、砂糖、パンを入れて一煮立したもの)などもお勧めです。但し、食べられるようになっても、胃腸の働きは100%までには回復していませんから、少量ずつ頻回に与えるようにしましょう。
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(8)母乳を与えてもよいですか?
はい、大丈夫です。但し、嘔吐した直後はお勧めできません。母乳自体は胃腸には良いのですが、母乳は一回に胃腸に入る量が多いことが難点です。
可能なら搾乳して少しづつ与える方が安心です。母乳を飲まないとどうしても寝付けない、などの場合は「飲んで直ぐに嘔吐」ということになり易いのですが、1日から2日の辛抱なので、ある程度しょうがないかと思います。くれぐれも「飲んでは嘔吐」を繰り返さないようにして下さい。
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(9)粉ミルクの濃さは?
当院では粉ミルクの濃さはいつも通りして戴いています。
病初期は粉ミルクを薄めて与えても、一回に与える量が多ければ、胃腸の受け皿から漏れるように嘔吐や下痢をおこします。嘔吐するよりは少量ずつでも栄養価がより高い普通濃度の粉ミルクを確実に吸収してもらった方が、お子さんにかかる負担が少ないと考えています。
但し、胃腸炎の程度と下痢の長引き加減によっては、一時的に粉ミルクを止めて戴いたり、短期間のみ二次性乳糖不耐症の時に用いる粉ミルクに代えて戴く場合もあります。
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(10)嘔吐が続く場合(胃腸炎以外の病気?)
少量頻回の水分摂取を行っても嘔吐が続く時は次のような状態が考えられます。ご自宅で我慢しないで医療機関を受診しましょう。診療可能な病医院の探し方:救急テレホンサービス
1)脱水症の程度が強く点滴が必要である可能性
2)ウイルス性急性胃腸炎以外の病気の可能性
次にあげる病気は、嘔吐を初発症状とする事がある子どもの病気で、病初期には病気の特徴的な症状が現れないことが多いものです。早期診断のために嘔吐や不機嫌が続くときは何度でも医療機関を受診して下さい。
腸重積症・盲腸炎(急性虫垂炎)・睾丸捻転・上部尿路感染症(急性腎盂腎炎)・細菌性髄膜炎など
腸重積・盲腸・腎盂腎炎・睾丸捻転などによる嘔吐は「腹膜刺激症状」により引き起こされるので、飲んだり食べたりしなくても嘔吐が続きます。
髄膜炎による嘔吐は「髄膜刺激症状」によるおこるので、同様に、飲んだり食べたりしなくても嘔吐が続きます。
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(11)家族にうつさない工夫(感染予防)
1)マスクとビニール手袋
嘔吐したものを片付ける場合は、ウイルスが口や鼻から入らないように、保護者がマスクと使い捨てビニール手袋を着用して下さい。汚れたパジャマやシーツ、タオルなどは、ざっと汚れを落とし、次亜塩素酸ナトリウムで消毒をしてから洗濯機に入れてください。直ぐに洗濯機に入れると洗濯機が汚染され、洗濯のもを介してウイルスに感染することがあります。
2)床・カーペットの消毒
嘔吐した場所にウイルスが残っていると、乾燥してウイルスが舞い上がり、飛び散って室内の人に感染する可能性があります。嘔吐したものを片付けたら、次亜塩素酸ナトリウムで床やカーペットを消毒しましょう。
3)食事は別々に取る
病気のお子さんの咳やくしゃみは、ウイルスを遠くまで飛び散らせ、ご家族の食物をウイルスで汚染します。また、お子さんのスプーンを間違ってお母さんが使ってしまう事も良くあります。これを避けるために、お母様と病気のお子様は別々に食事を取りましょう。
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(12)消毒(次亜塩素酸ナトリウム)
1)ノロウイルスやロタウイルスに有効な消毒薬
次亜塩素酸ナトリウムを含む消毒薬が有効です。濃度が薄いと効果がありません。用途によって適切な濃度を選びご自分で調整して下さい。
・吐物で汚れた床やトイレ「0.1%」濃度
・汚れた衣類、蛇口、ドアノブなど「0.02%」濃度

2)次亜塩素酸ナトリウムを含む商品と濃度

色々な濃度の消毒薬が市販されています。最近はご自分で濃度の調節をする必要がない便利な製品も市販されています。


0.1〜0.5%濃度:ジアエンフォームなど
1%濃度:ミルトン・ミルクポンなど
6%濃度:ピューラックスなど

■濃度調整不要
0.1〜0.5%濃度:ジアエンフォームなど(すぐ使えます)
当院でも使用しています

■0.1%濃度に調整する場合
1%濃度のミルトン・ミルクポン
水1リットルにミルトンを100ml入れる

6%濃度のピューラックス
水1リットルにピューラックス16.7ml入れる
■0.02%濃度に調整する場合
1%濃度のミルトン・ミルクポン
水1リットルにミルトンを20ml入れる

6%濃度のピューラックス
水1リットルにピューラックス3.3cc入れる
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(13)点滴は必要ですか?
中等症以上の脱水症に対しては、点滴による水分補給が必要です。軽症の脱水症についても、3ゆっくりと水分摂取(少量頻回の経口水分接種)を行っても嘔吐してしまう場合や、短時間に嘔吐を頻回に繰り返した場合は点滴が有効な場合が多いようです。
ある程度、脱水状態が強くなると体液のバランスが崩れてぐったりします。そのようなお子さんに点滴を行うと、胃腸を休めながら水分を補給できるので顔色も良くなります。
但し、点滴を行って少し顔色が良くなっても、胃腸の働きが元に戻るのには時間がかかります。点滴後もおなかに負担がかからないようにして下さい。
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(14)ノロウイルスの検査は必要?
あまり必要はありません。
嘔吐や下痢の原因がノロウイルスでも、アデノウイルスでも、ロタウイルスでも、急性胃腸炎の治療方針は変わりません。
ウイルス性の胃腸炎に限らず、小児科では治療方針を変える可能性が低い検査は、お子さんに負担がかかるので積極的には行いません。(インフルエンザや溶連菌感染症など、検査の結果により治療薬が変わったり、治療期間が変わる病気については、お子さんに負担がかかっても検査することをお勧めしています)
また、現行の医療保険制度でノロウイルスの検査を外来診療で行えるのは、3歳未満の方だけです。
ノロウイルスは予防手段が限られていますが、ロタウイルには予防ワクチンがあり、平成23年11月21日に発売されました。

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